栃木県・宇都宮市を拠点に活動中
日本と世界の橋渡しをしたいと活動されている、荒川篤人(あらかわあつと)さんにお話を聞きました。
photo by 小西隆博
右が荒川さん、左が私。
和雑貨の販売等を行う J×R Market 設立。日本と世界を繋いでいく『4KAKERU』(しかける)を法人化に向けて準備中。
日本文化に興味があって着物をリメイクした雑貨を手掛けているということは元々知っていたのですが、今回お話を聞いて、なんかもう色々なことに取り組まれていてスケールが大きくてびっくりしました。
photo by 小西隆博
和雑貨の1つ。ファスナーの引き手についているのは本物の竹で、こだわって作られているそう。
Amazonでの家電販売や内閣府の貧困対策の学習支援も
はる:和雑貨なんですけど、どうやって販売されているのですか?
荒川:リサイクルショップで取り扱っていただいたり、手伝っているゲストハウスに置いてもらったりしています。Amazonでも販売もしてるんですけど、Amazonでは中古の家電製品の販売もやっているんです。
はる:Amazon!おお!!家電製品の販売をされてるって初めて聞きました。
荒川:Amazonの起業の塾に1年くらい通いました。すべて自分が動かないと収入に繋がらない状態だと自由も制限されてしまうので、倉庫とか委託したりで自動化を進めています。今はだんだん、他のことにも広げていけるようなベースができてきました。
はる:ネットで販売する基盤ができて、和雑貨など別のものも販売できるようになっているんですね。他にも取り組まれていることはあるのですか?
荒川:内閣府のプロジェクトの塾に非常勤で携わっています。貧困家庭と言われるような家庭に国が提供している塾です。中学生に英語と数学を教えています。
はる:どういう経緯でやることになったのですか?
荒川:両親のことや家の建て替えもあって東京から実家の宇都宮に戻ることにしたのですが、仕事の相談していた団体の人から、君できそうだからやってみない?って言われました。
はる:仕事の相談ってどんなことですか?
荒川:今後のキャリアの相談です。僕、けっこう転職しているのですがほとんど外資系なんですよ。自分の適性からして日本の企業よりもフリーで動く方がいいかなというふうになりました。
はる:中学生に教えてたら、思うこととかあるんじゃないですか?
荒川:ありますね。これから先、日本を支えていく存在じゃないですか。僕は就職氷河期の世代なのですが、学校を卒業しても働くところがない、がんばっても活躍できる舞台がない、未来が望めないという社会だと申し訳ないなって。これから日本と世界の距離は近くなってくるので、そういうことに関われるような土壌とかきっかけとか作れたらいいなと思っています。
はる:いい先生だー!
元々はフランス好き。日本初の甲州ワイン輸出にも関わる
はる:始めはどういう仕事をされていたのですか?
荒川:大学を卒業して日産に営業で入りました。フランスのカルロス・ゴーンさんがちょうど日産のCEOになるという時で、フランスが好きだったから興味あるかなと思って。
はる:荒川さんは日本文化っていうイメージが強いんですけど…フランス好きなんですね。
荒川:交換留学が盛んな高校で、留学生達と話すのはすごい好きだったんですよ。そして世界史にはまりだして、ナポレオンの街づくりがかっこいいなとかいうのに惹かれて。大学はフランス文化を学んでいて、論文では「星の王子様」の作者が書いた本の翻訳をしました。
はる:フランスにどっぷり関わるような仕事にしなかったのはなぜですか?
荒川:フランスで何がしたいのかがまだ定まっていなかったんです。なので営業をやって世界を広げて、でも期限は3年と決めていました。そうしたら自分が好きだったお酒と繋げてワインがいいんじゃないかというを、卒業後も交流があった大学の教授に勧められてワインの産地のボルドーに行くことになったんですね。そして会社を辞めました。
はる:本当に3年で辞めたんですね…!!!!
荒川:6ヶ月くらい向こうに住んで、そのうち3ヶ月はホームステイです。1度に20人くらい受け入れいている家庭で、入れ替わりが多かったので4,50人くらいは交流しました。色んな国の人がいて、スペイン、モロッコ、コロンビア、フィンランド、中国、アメリカやカナダからも来ていました。
はる:フランスに行ってみてどうでしたか?
荒川:0から1を作るのがフランスの人ってすごい上手なんです。海に行くのに水遊びするボールとかは一切持たず、木の棒だけで遊んだり、何もしないでぼーっとしてリフレッシュしたり、その場で知り合った人とグループ作ったり。何もないところから価値を見出したら世界が開けてくる、自分の価値や誰かの価値を見出したらもっと色んなことができるんじゃないかっていうのが無意識に植え付けられた感じですね。
はる:フランスから帰ってきてからは何をされたのですか?
荒川:山梨の甲州ワインを日本で初めて輸出したプロジェクトに関わっていました。ワインの仕事をやりたいなと思っていて、東京のワイン会社が募集しているのを見つけたんです。富士山が見える場所で、何もない荒れ地を農家の方と耕すところから始まりました。
はる:なんと…ブドウの畑作りからやったんですね。
荒川:東京の事務所で働きながら日帰りで山梨に行っていました。ブドウを植えて、ブドウの木の撮影をしたり観察記録をつけたり、ナンバーをつけたりと地道な作業で。フランスの大学から来たコンサルタントの方と農家さんの通訳もやっていました。
はる:通訳も…すごいなぁ。
荒川:結局4年ちょっとやってたんですけど、日本の甲州ワインっていう、ブランド価値がつくような仕事をやって世界的に評価されるようになって、一個ずつ形にしていくのはけっこうおもしろいなって思いました。
はる:荒川さんはワインが好きというのはちょっと知っていたのですが、こんな大きなプロジェクトに関わっていたのですね。
荒川:ワインは今も好きで現場の作っているところから飲みたいとまたフランスに行ったり、山梨や長野などのワインの有名なところにも行ったりで。以前は国際交流のパーティーで、これが日本のワインだって言って開けて他の国の人と打ち解けたりもしましたし、ワインも日本のことを知ってもらうためのツールの1つで、もっと何か伝えていけたらいいなと思っています。
ソムリエの資格をとって、休日に個人でワイン会を開くように。ソムリエのバッチ持ってきてくれました。延べ1000人ほど参加しており、講師の依頼も受けているそうです。
横断歩道だって日本の文化
はる:日本に興味を持つようになったのはなぜですか?
荒川:海外に行って外国の人と話すにつれて、日本について教えてくれって言われたときに話せることがないなと思ったんです。日本の歴史や社会について語ることができなくて他の国の人たちと全くレベルが違うなって感じてしまったんですよ。
はる:日本ってそうだと話にはよく聞きますけど。実際やっぱりそうなんですね。
荒川:逆に日本のことを教えてもらったりもします。漫画や料理や、あとお祭りのこととか、YouTubeでソーラン節を見せられて、これ日本だろ、いや知らない、踊ってみて、って無理矢理踊らされたりとか(笑)
はる:そんなこと言われるんですね(笑)
荒川:海外の友達が日本を訪れてくれることもあってどこを案内しようと思うのですが、東京タワーや新宿御苑といった日本を代表する場所や、普段行かないようなところもあえて調べてみると日本の良さに気付かされるんです。渋谷にスクランブル交差点を見に行くとか、浅草にもんじゃ焼きを食べに行くとか。
はる:私も初めて渋谷に行ったときに交差点の人の多さにびっくりしました…これも日本文化なんですね。
荒川:横断歩道で鳥の声がするの、あるじゃないですか。フランスの友達がやたら気に入って真似していました。
はる:そこに反応するとは(笑)
荒川:そうするうちに、日本って世界に誇れるものってこんなにあるんだ、もっと紹介していこうという視点が生まれたんです。外国のことを勉強しようという側だったんですけど、今は日本に海外の観光のお客さんを呼び込んでいく時代ですし、逆に日本のことをアピールしていきたいっていう考えになりました。
フランスやペルー、台湾などへ進出中
はる:「4KAKERU」を法人化していくということですが、和雑貨はその活動の中の1つなんですね。
荒川:そうですね。衣食住、そして遊びをコンセプトにしていて、和雑貨などの日本製品の再利用は「衣」ですね。日本に海外の人を呼び込んでいく、インバウンド目線で世界に日本のことを紹介していくのと、日本に来た人と仕事を繋げていくということをテーマにしています。
はる:和雑貨はどのような経緯で始めることになったのですか?
荒川:NPOで着物の普及に取り組んでいる方と出会ってからです。着物の素材とかを調べると、正絹(しょうけん。100%純シルクの着物)というすごく価値のあるもので、こんなものがタンスに埋もれていたり捨てられる現状は変えていった方がいいと感じて。
はる:捨てられるのは切ないですね。
荒川:どうしたら世の中にもっと価値を提供していけるかと考えたときにリメイクするという方法を思いついて、業者を片っ端から調べて着物のリメイクをやってる専門のお店を見つけました。社長が話を聞いてくれて、おもしろそうだからやろうよって言って下さったんです。これからブランドとして価値を高めていって海外でも販売したいと考えていますが、先日はペルー人の友達が、ペルーのお祭りで販売してくれました。
はる:地球の裏側でそんなことが…!その方とはどういう繋がりなのですか?
荒川:宇都宮市の国際交流の、フットサルを通じて知り合いました。そのお祭りをやっている協会の副会長という立場で日本に駐在している方だったんですよ。
はる:そういうご縁ってあるのですね。
荒川:日本人でフランスに15年くらいいる、すごく腕の立って現地でも慕われてる料理人がいるんですけど、お会いしたときに見せたらすごい評価してくれました。これがJAPANだ!というものを紹介したいんだよね、これいいねって。
はる:なかなか好評ですね。
料理人さんから好評いただいた名刺入れ。名刺交換するときに目につくのがいいそうです。
荒川:住環境では、宇都宮市の隣にある鹿沼市の、江戸時代の旅館を再生したゲストハウスにも関わっています。食の部分では、料理教室を海外展開したいという方の台湾進出のプロジェクトをやっています。日本の無農薬野菜や、ダシを提供している料理教室です。海外ってダシっていうものがないので。
はる:ダシの繊細な味は日本ならではと聞いたことがあります。
荒川:遊びの部分では、ちぎり絵などの親子参加型のワークショップをしている団体があって、そういうところを手伝ったりして徐々にふくらませていこうかなと。
はる:もうあらゆることをされているんですね。
荒川:海外と日本を繋げていくという仕事をやっていこうと考えていますが、ワインや着物だったり、遊びや仕事だったりといったきっかけやツールを通じて、全然知らなかった人たちを繋げるというイメージです。
はる:荒川さんはこちらが驚くようなこともこれからやってしまうような気がします。これからの事業の拡張が楽しみです。ありがとうございました!!
J×R Market(JAPANESE×RE:USE)
着物をリメイクした和雑貨など、日本製品の再活用を行っています。
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