情熱大陸を見て落合さんに興味を持った
2017年11月19日に放送された、落合陽一さんの情熱大陸。研究者として天才的な方だということは以前からも知っていたのですが、この番組を見て落合さんのことをちゃんと知りました。
メディアにも多く出ていることから、発信することに力を入れている方なのかなと思っていました。が、番組を見て、発信しつつも現役バリバリで研究で実績を出されている方ということが分かり興味を持ちました。番組の中で、人と機械が融合する「デジタルネイチャー」という世界の実現に向けて研究していると紹介されていて、AIのことは私も気になっていたし、本を読んでみることにしました。
超AI時代の生存戦略 ―― シンギュラリティ<2040年代>に備える34のリスト
なぜ落合さんは働き方などの話題によく出てくるのか?
まずこの本を読んで、落合さんに対するちょっとした疑問が解決しました。落合さんは研究者なのに、どうしてメディアでよく見かけるのか、特に働き方とかそういう話題で出てくることが多いのか、ということ。
僕が筑波大学で主催するデジタルネイチャー研究室も、そういった、未来に姿をイメージし、実装し、それに問いかけるということを繰り返すことで、考え方を作り続けている。
…(中略)
たとえば、会議とはどうあるべきか、働き方はどう見直されるべきか、人の過ごし方はどうやって変わっていくのか、それらのベースの考え方をどう変えるべきか。
『超AI時代の生存戦略』プロローグより
あ、あと、こんなツイートもされていました。
「落合さんセルフブランディングがうまいですよね」って言われるけどそれ運と偶然.現代の魔法使いってフレーズ付けたのはライターだし,ヨウジヤマモトは高校生のときから着てるし,偏食はなんとも思ってないし,メディアの切り取り方気にしないし,テレビやWebや書籍の露出は仕事を断ってないだけ.
— 落合陽一/Dr.YoichiOchiai (@ochyai) 2017年12月25日
落合さんと言えば科学の力で不思議な現象を実現させているイメージが強かったんですけど(物体が浮いてたりとか)、働き方とかそういうことをまさに研究している方だったんですね。ガリレオやエジソンなど歴史の話も出てきたり、哲学や宗教の話もあり、そしてもちろん科学の話もあったりと、見解の広いその道の専門家が書いた本で説得力がありました。
全体を読んだ感覚としては、「AI」のことよりも、「働き方」の話の方に重きが置かれていたような気がします。一読しただけでは理解できないこともわりとありました。分からないところを読み飛ばしても全体はなんとなく把握できるのですが。でもこういった働き方とかの本にありがちな、いいことは書いてあるけどすでにどこかで聞いたような話で物足りない、という印象はなく良かったと思います。新鮮でした。
よく分かっていない人が「クリエイティブな仕事を」と言う
AIの時代だから「人はクリエイティブな仕事をしよう」というのは、本質を分かっていない人が、不安を煽るような記事を書いてバズを狙っているだけだ、というようなことを書いていました。何度も「クリエイティブ」に対する否定的な話が出てきて、落合さん、よっぽど「クリエイティブなことをしよう」という風潮が嫌いなんだなと思いました。。念のための補足ですが、「クリエイティブ」そのものを否定しているわけではなくて、「根拠のないテクノロジー悲観論」に何の意味があるのか、と主張しています。
これは私も思うところもあったので…「クリエイティブ」という言葉じゃないにしても、「AIの時代になるから、〇〇しなければ生き残れない」という記事はよく見かけてはいたのですが、そういう記事ほど、新しい情報や専門的な話は特にないし読んでもおもしろくないなぁと感じていまして。。
だけどこの本では、ロボットやAIはどういう仕事が得意なのか、逆にどういう仕事は人にしかできないのかということがしっかりと書かれていて勉強になりました。じゃあこの本を読んで具体的にどんな仕事をすればいいのかというところまでは分からなかったのですが、きっとそういう主旨の本ではないし、AIの特性などを把握するには良かったかと。AIに対する漠然としたイメージが整理されました。
AIに対して楽観的なのかと思いきや
個人的に納得したのがこの箇所。
この構図は機械対人間ではなく、「人間」と「機械親和性の高い人間」との戦いに他ならないのだから。
『超AI時代の生存戦略』プロローグより
AIは脅威だと言う人もいますが、結局はAIではなく、AIをうまく使いこなす人が、そうでない人の仕事を奪っていくであろうことが脅威なんですよね。そしてそれは決して後者に非があるわけではなく、ただ「機械親和性の高い人間」ではなかっただけなのに。
先にも書きましたが、情熱大陸で、人と機械が融合する「デジタルネイチャー」のことが紹介されていて、AIに対して楽観的な方なのかな?と思っていました。ですが本を読んで、歴史において科学の発達で社会や価値観がいかに変わったか、プラス・マイナス両方の側面も知った上で、これからの変化に対してどうすれば人は幸せな社会を築けるのか研究し模索し続けている方なんだろうなと感じました。もちろん絶対に正しい、ということはないのですが、読者に正しい知識を共有することでAI時代が良いものになっていけば、という思いを込めて書かれた本だと思います。
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